虎屋の若葉陰〜江戸の金魚のお話し〜

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水の中を美しい彩りで泳ぐ金魚は、涼を呼ぶ夏の風物詩。

その様を見事にお菓子に表現した、「虎屋」の『若葉陰』と言う季節の生菓子の存在を知ったのは、まだ十代だった頃の事ですが、ずっと食べてみたいと思いつつ、夏のひと月のみの販売時期を毎年逃し続けていました。今年もあやうく今月末の販売終了になる直前に思い出し、はじめて入手。

透明に澄んだ寒天の中に浮かぶ金魚がかわいらしく、水色の器に入れてあげると、ほんとうに水の中を泳いでいる様です。味も、しっかりした食感の琥珀部分の品のいい甘さは、さすがの虎屋さんでした。

太田記念美術館「没後一五〇年記念 歌川国貞」展図録より

 

金魚は室町時代には中国から渡って来ていた様ですが、江戸時代初期までは、一部の富裕層の愛玩動物でしかなかったものが、宝暦(1751~64)の頃には、金魚を売る露店が出るほど、江戸の庶民の間で大流行したそうです。

虎屋の若葉陰は初出年が大正7年(1918)となっていますが、金魚をかたどったお菓子というと思い浮かぶ、江戸時代後期の浮世絵師・歌川国貞(三代豊国)の「誂織当世島 金華糖」という浮世絵には、金華糖という、水で練った砂糖を型に入れかたどり、着色した金魚のかたちの駄菓子が描かれています。
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夏を感じさせる金魚は、昔も今もいろいろなかたちで人々に愛される風物詩だったのですね。

同じく夏の代表的な風物詩である『向日葵』のお菓子も彩り美しく美味しいお菓子でした。