「能への扉『 葵上〜梓之出・空之祈〜』」

aoinoue

銕仙会能楽研究所で「能への扉『葵上〜梓之出・空之祈〜』」を観能しました。

シテ方観世流の谷本健吾さん・笛方の八反田智子さん・研究者の中司由起子さんのお三人による瑠璃の会の主催の三回目の公演。
私自身は昨年に続き、二回目の瑠璃の会公演の鑑賞です。

昨年の瑠璃の会での公演で、はじめて、お能ってほんとに美しくて面白い!!と開眼させて貰った様な気持ちになったのですが、そんな気持ちになった大きな原因のひとつに、面の表情がどんどん変わって行く様に見えたという経験が有りました。

今回の「葵上」でも、前シテの泥眼の面の表情が次々と変わって行って見え、六条御息所の哀しみや憂いが、嫉妬と恨み、そして激昂に変わる様子と、高貴な御息所が、そんな自分の激情を持て余している様な哀しさが、変わり行く面の表情からひしひしと感じられました。
御息所が変わって行く感情を観る側のこちらの心に切々と訴え掛けて来ている様な、臨場感あふれる素晴らしい舞台に、御息所の哀しみを想い、胸が詰まる様な気持ちになりました。

面の表情がまるで素顔の様にどんどん変わって行く様に見えるというのは、演目や演じる能楽師さんや観る側の自分の体調というか、その時の集中力なども関係があるのでしょうか?
まだまだ能楽鑑賞超初心者の私なのですが、そんな風に見えた舞台が特に記憶と心に深く残り、またそんな経験をしたいなと思ってしまいます。